貨物自動車

一般貨物自動車運送事業許可とは、第三者からの依頼により有料で荷物を運ぶために必要となる許可です。

「緑ナンバー」「営業ナンバー」の取得と呼んでいる方も多いです。

トラックなどの貨物車に緑色のナンバーがついているのを見たことがあると思います。

このナンバーがついている車の事業者は一般貨物自動車運送事業の許可を取得していて、荷主の依頼により、運賃をもらって荷物を運ぶことができるのです。

緑ナンバーを取得しないで荷物を運送すると

一般貨物自動車運送事業の許可を得ないで、お金をもらって荷物を運送してしまうと無許可営業となり、罰則規定が適用されてしまいます。

貨物自動車運送事業法70条第1号

「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

手続き費用

手続き名 費用 実費 備考
一般貨物自動車運送事業 550,000円 1.手続きにかかる印紙、120,000円

2.法定書類取得費用、5,000円

詳しくはお客様の相談内容をお聞きした上で正確なお見積もりをいたします。

一般貨物自動車運送事業許可の要件

一般貨物自動車運送事業許可を取得するには、多くの要件をクリアしなければなりません。

  1. 営業開始に要する資金
  2. 営業所
  3. 乗務員の休憩・仮眠室
  4. 駐車場(屋根の有無は問わない)
  5. 自動車5台
  6. ドライバー5名
  7. 運行管理者1名
  8. 社会保険等完備(健康保険・厚生年金・労働保険)

大まかに分類してもこれらの要件があります。

「なんだ、たったこれだけ」と思ってしまう人もいるはずです。

しかし、1つ1つの要件を細かく見ると、これじゃ許可は難しいと諦めてしまう社長さんもいます。

では、要件1つ1つを細かく見てみましょう。

要件1:営業開始に要する資金

営業開始に要する資金とは緑ナンバーを取得して、実際に運送事業を始めるまでにかかる総費用です。

この費用を用意することができずに許可を断念することもあります。

様式が用意されているので、どのような項目があるのか見てみましょう。

事業開始に関する資金

金額順に見ていくと、車の購入又はリース費用、車の保険料等、人件費等が高額です。

用意しなければならない金額は事業所によって違いはありますが、概ね1,000万ぐらいになるはずです。

賢い方は一時的にその資金を用意して要件をクリアできないかと考えると思います。しかし、申請時点と許可が下りた後に銀行の残高証明書を提出するため、一時的に資金を用意して要件をクリアすることはできません。

さらに、資金を用意してから許可が下りるまで、必要な自己資金額を下回ってはいけないという厳しい要件です。

要件2:営業所

営業所も必ず必要です。

安く済ませたいからプレハブやスーパーハウスを直において、営業所にしたいという方もいますが、基本的にプレハブは営業所としての要件をクリアすることはできません。

しっかりとした基礎工事をして、建築確認申請や消防法等の法律を守れば問題ありませんが、そうなると通常の事務所を借りた方が安くなります。

営業所には他にも農地に該当しないか、都市計画法等関係法令に抵触しないかなどの厳しい要件があります。

駐車場から半径5キロメートル以内に設置しなければならないという条件もあります。

要件3:休憩・仮眠室

ドライバーさんが休憩する休憩室の用意も必要です。不規則な勤務であれば仮眠室も必要になります。

休憩・仮眠室の場所は営業所か駐車場に併設されている必要があります。

さらに、ドライバー1人につき十分なスペースが確保できるかも大事です。概ね1人に付き2.5㎡です。

休憩・仮眠室も農地に該当しないか、都市計画法等関係法令に抵触しないかなどの厳しい要件があります。

要件4:駐車場

事業に使用するトラックを駐車するため、十分な広さが必要になります。

規定では7.5t超は38㎡、7.5t迄は28㎡、2tロングは20㎡、2t迄は15㎡となっています。

駐車場は場所も重要で営業所から5キロ以内と定められていて、5キロ以上になってしまう駐車場として認められません。地域では、10キロ以内(道内だと札幌等)の場所もあるので役所に確認が必要となります。

営業所、仮眠室と同じで農地に該当しないか、都市計画法等関係法令に抵触しないかなどの厳しい要件があります。

要件5:自動車

運送業を始めるにあたって、5台の車をすぐに動かすか?と言われれば動かす程仕事の量がない場合もあります。

じゃあ、開始直後は5台も入らないのでは?という主張はごもっともです。

しかし、役所から言われることは、5台を動かす前提でなければ運送事業の許可は下ろせないと言われてしまったことがあります。

全くもって、血も涙もないですよね。

なので、実際に5台を走らすか否かにかかわらず必ず5台の車を用意する必要があります。

用意する車のうち、バンやハイエースなどの小型車を使用することもできます。黒ナンバー等の軽貨物は使用できません。

また、牽引車を1台とすることはできず、牽引車と被牽引車で1台となります。

要件6:ドライバー5名

ドライバーも必ず5名必要になります。

実際にトラックを5台走らせるかにかかわらずです。

資金を抑えるために、短時間ドライバーを用意して運転手の給与を少なくして要件をクリアしたいと考える人もいますが、それは不可能です。

ドライバーの条件は8時間勤務以上のドライバーとなっているので、短時間ドライバーをもってドライバー5名という条件をクリアすることはできません。

短時間ドライバーを認めてしまうと、例えば1名が8時間勤務、残りの4名が2時間勤務の場合、資金要件の「給与」を大幅にカットすることができます。

短時間ドライバー4名で月に136,080円の給与になります。正式には4名で544,320円なので、40万円以上資金要件で違いが出てきます。資金要件は2ヶ月分なので80万円以上の違いが出てしまいます。(1H 810円の最賃の場合)

なので、ドライバー5名は常勤のドライバーを選ぶ必要があります。

許可後は短時間ドライバーを採用しても問題はありません。

要件7:運行管理者

一般貨物自動車運送業を始めるにあたって、必ず必要となるのが運行管理者の選任です。

運行管理者は(1)運行管理者試験に合格した者又は(2)国土交通省令で定める一定の実務の経験その他の要件を備える者と定められています。

(1)の運行管理者試験に合格した者とは「公益財団法人 運行管理者試験センター」が実施する試験に合格した者です。

(2)の国土交通省令で定める一定の実務の経験その他の要件を備える者とは「事業用自動車の運行の管理に関し5年以上の実務の経験を有し、その間に運行の管理に関する講習を5回以上受講している者」と定められています。(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第24条1項(運行管理者の資格要件))

(2)の講習については平成19年4月1日の運行管理者補助者制度の開始にあたって、制度開始前・後で講習のカウント方法が変更されていますので注意が必要です。

運行管理補助者制度開始後では、基礎講習受講前に一般講習を受けていた期間はカウントされません。基礎講習を受けて初めて運行管理に携わる条件が満たされると解釈されるためです。

ですから、基礎講習受講後に補助者と選任されて、5年以上の実務経験を経る間、1年に1度ずつ一般講習を受講されて計5回の講習を受けていることが要件となります。

詳しくは「運行管理者の資格要件」適性化だよりNO.42

「旅客・貸切」については運行管理試験合格者のみに限定されています。

要件8・社会保険等完備(健康保険・厚生年金・労働保険)

一般貨物運送事業を始めるには、社長本人はもちろん、従業員に対しても健康保険、厚生年金、雇用保険を掛けなければ、許可申請を行うことができません。

営業ナンバーを取得するには最低でも6人体制(5人のドライバーと1人の運行管理者)で事業を行う必要があるため、人件費と健康保険料だけでも莫大な開業資金が必要になります。

まとめ

一般貨物自動車運送事業を始めるには、大まかにまとめても8つの要件をクリアする必要があります。

もっと細分化すると「役員の法令試験」、「自動車の契約関係」、「事務所や駐車場の契約」、「自動車にかける保険」など様々あります。

これらの要件をご自身で全てクリアして、事業開始にたどり着くには多くの時間と労力が必要になります。

許可申請に関して不明な点がありましたらお気軽にメール・電話でお問い合わせ下さい。