父が亡くなり四十九日等家族で集まる機会があったときに遺産について話をしていると、「お前は父さんに可愛がられていたよね」「だって、お前だけ住宅購入の資金を援助してもらってたよな。」
このようなことは実際にある話です。
相続人の1人だけ「住宅購入の資金を援助してもらった」「海外留学をさせてもらった」「事業をはじめるときに援助してもらった」等、他の相続人より特別な利益を受けていた人のことを特別受益者と呼びます。
相続人間の不公平
相続人が複数人いてその中の一人だけ亡くなられた父から生前に特別な利益を受けていたとします。
父が亡くなり遺産分割の際に他の相続人と特別な利益を受けていた相続人が相続する財産の割合が同じであれば、特別の利益を受けていない相続人からしてみれば不公平となります。
そこで、遺産分割の際には不公平を是正するために特別受益者が生前に利益を受けていた財産も含めて遺産分割協議をすることになります。
簡単に言えば、「特別な利益を受けていた相続人」の取得する遺産の割合を少なくするということです。
特別受益となるのは
特別受益に該当するのは、以下に記載する、被相続人からの贈与です。
遺贈(遺言による贈与)、結婚費用、家を建てるための援助資金、大学の入学金等、様々なものがあります。
ただ、特別受益にあたるどうかは「相続人間の不公平」があるかどうかです。
一方の相続人に対してだけ、贈与をしている場合は相続人間の不公平にあたるとみられます。
逆に、相続人に対して平等に贈与していれば、不公平がないとして、特別受益に該当しないとみられます。
また、通常の教育費や病気等の治療費は特別受益にあたりません。
特別受益がある場合は
遺産分割時に特別受益がある場合は、一方の相続人が受けた特別受益の額を相続財産に加えて各相続人の相続額を計算することになります。
例えば、相続人が配偶者、子供2人の計3人で相続財産が5,000万円で子の1人が生前贈与2,000万円をもらっっていた場合、遺産の総額は生前贈与の2,000万円と遺産の5,000万円を合わせた7,000万円です。
法定相続額は配偶者が3,500万円、子2人は1,750万円ずつになります。
子の1人は2,000万円の特別受益を受けているので、法定相続額から受益額2,000万円を差し引きます。
法定相続分から特別受益の額を差し引くと-250万円となり、多くもらいすぎているため、返す必要があるのかと思いますが、民法の規定では多くもらいすぎていても返す必要はないとなっています。
ただし、-250万円がどのような取扱になるのかですが、配偶者と相続を受ける子で負担します。
計算方法は法定相続の割合×遺産額(5,000円)です。
配偶者は2/3×5,000万円=3,333万円(端数切捨)
子供(特別受益を受けていない者)1/3×5,000万円=1,666万円(端数切捨)
となり、本来受け取るはずだった金額よりも少なくなってしまいます。
特別受益にあたるかどうか
特別受益にあたるかどうかは、すごくデリケートで争いのあるところです。
単純に他の相続人の方が優遇されているから特別受益に該当するともいえません。
個別具体的な判断については、争いがあるため当職で判断することができないので、提携先の弁護士をご紹介いたします。